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コートを駆け巡るナリのようなプレーヤーが必要なのです───

※このインタビューは08年4月に行われました。
井上 今年からサウスケント校のヘッドコーチに就任した訳ですけれども、どういうチームを作りたいと思っていますか?
ジェファーソン まず楽しむこと。ですからナリが重要なのです。非常にスピードがありますから。アップテンポのプレーを目指しています。コートをスピーディーに駆け巡り、ボールを前に展開し、オープンコートに入り込み、早い段階ですばやく得点に結びつける。ですからコートを駆け巡るナリのようなプレーヤーが必要なのです。コートを自由自在に走ることが出来ない選手は要りません。ナリは完璧です。レーンまで走り、パス回しも良く、コーチとして彼の技術を多いに活かしたいと思います。選手の採用の際に、こうした選手を求めます。ハイレベルでもコートを歩くような選手はお断りです。こうした選手は要りません。楽しむこと。でもそれは全てきちんとコントロールされてのことです。ぐちゃぐちゃでは困ります。コートを行ったり来たりと常に動きながら、早い段階での得点機をうかがうようにします。それができなければ、自陣から出し決まったセットプレーをすること。これはとても大切なことです。今年のメンフィスとカンザスの決勝戦(※2007-2008 NCAAトーナメントの決勝のこと)では、このスタイルを使っていました。ディフェンスも固くパッシングレーンに割り込み、すばやく得点を狙っていました。即座に得点を挙げられない時は、ハーフコートオフェンスに切り替えました。これをやりたいのです。選手たちが「チャンス」をはっきり感じ取ることが大切なのです。チャンスの際には、躊躇なく攻撃に移り、そうでない場合はセットプレーに切り替えることです。これをやりたいのです。セットプレーを多くは用いたくはありませんが、やる時は完璧にやる。多用はしないが完璧を目指します。練習で、準備を整え、狙いを確認します。これが私のゲームプランです。またディフェンスも非常に重要です。プランを進めるためにはディフェンスが大切です。ですから重複にはなりますが、ナリが鍵なのです。彼はディフェンスもできる。ナリの前にプレーヤーをキープさせることができます。これが大切です。
井上 ナリはたまたま、すごくコーチの考えとフィットしているみたいですね。
ジェファーソン その通りです。選手の受け入れは多少緊張します。彼が到着し「どうかな。うまくフィットしてくれればいいが」という感じです。そして彼の技術、コートでの動きはまさに私が望んでいたものでした。彼の大きなアドバンテージとして言えるのは、この国のハイレベルな選手たちを知らないということです。アメリカの多くの若者はこうした選手たちとのプレーで、威圧されます。例えば今年のサウスケントのポイントガードは全米でも有名な選手で、奨学金を得てコネチカット大学に行くことになっています。でもナリはそんなことは知りません。彼には関係ないのです。誰にでも同じようにプレーします。ナリは気にもとめません。とてもいいことだと思います。恐怖感もなく、ただコートでプレーに集中し、相手を気にしない。そういう点がとても気に入っています。
井上 来期(※2008年11月から始まる2008‐2009シーズンのこと。2009年3月まで35~40試合を戦う。)のチーム編成は、いつなさる予定ですか?
ジェファーソン 現在チームの選手集めの最中です。出来れば7月末(※2008年7月の事)までにチームを作り上げたいと思います。今は、電話で勧誘しています。チーム作りという点ではプランがあり、それはナリの他に、更に1-2名ポイントガードが必要になるでしょう。それからフロントコートが4-5名、ウィングプレーヤーが2-3名です。どのポジションも余分な人数を置くことはしません。ポイントガード5人は要りません。無意味です。ナリの他に2名が適切でしょう。どのようにチームを纏め上げるか考えなくてはなりません。それを今行っているところです。選手勧誘、チーム編成。できれば 7月末までに形を整え、「さあ、これが2008-2009の我われのチームだ」とお見せしたいですね。
井上 どんな選手をコーチしたいと思いますか?
ジェファーソン 教えがいのある選手ですね。学習意欲と向上心を持ち、話に耳を傾け、行動に移す。常に教え、同じことを何度も繰り返し口すっぱく言わなければならないのではダメです。これが第一点。それからプレーに打ち込むこと。そういう選手が好きですし、ナリがそうです。彼を個別に教えた際、言葉の壁にも関わらず、全ての指示を飲み込んでくれました。全てに熱心に取り組み、耳を傾ける。彼のすばらしいところです。常にアイコンタクトをとります。前向きで「わかりました。どうすればいいですか。何が必要ですか」という姿勢です。ですから私にとって重要な2点は教えがいのあること、そして学習意欲と向上心を持ち、一生懸命プレーすることです。
井上 日本から来る選手に何を期待しますか?
ジェファーソン 難しい質問です。初めから決め付けるつもりはありませんし、日本から来ているというだけで、他のアメリカ人選手への期待度と何ら違いはありません。大学レベルでプレーしたいと強く望んでいる若者を望みます。コーチとしての私の目標は、上達させてやることです。ですからどんな選手でも先ほどの二点、教えがいのあること、熱心であることが鍵となります。それを備えた上で、あとはポジションによります。例えば、ポイントガードとセンターであれば、当然異なる資質が必要です。ナリはポイントガードにはうってつけですが、反対にセンターであれば、ゴール下での得点能力が必要ですし、手をうまく使い、体格にも恵まれている必要があります。ウィングプレーヤーは、コートを走り自分自身でゴールを決めることが求められます。プレーヤー次第なのです。どこからやってきたかは全く関係ありません。
井上 あなたが望まれるような選手を我々は留学させたいと思っています。奨学生には出来るだけプレーの時間を与えてやりたいと思っているのですが…
ジェファーソン はい。よくわかっています。ロースターを考える際、どんなポジションでも余分に選手は置きたくありません。十分なプレー時間を与えられませんから。ロースターに20人載せるつもりはありません。申し上げたように1人1人が十分にプレーできません。各ポジション最低限の選手で構成したいのです。理想的なトータルは13人ほどです。これで選手全員に最大限のプレー時間が行き渡ります。私の仕事は彼らを卒業させること、良いプレーヤーとして育てること、大学での機会を提供すること、これらをしっかり行うことです。そのために彼らはコートに立ち、プレーしなければなりません。ですからあなたのご心配は理解しています。
井上 選手をとって欲しいと強制しているわけではありません。チームにベストのプレーヤーを選んでいただきたいと願っています。もしチームに十分に貢献できないと判断されれば、加えていただく必要はありません。
ジェファーソン はい、了解しました。理想的です。私は常に正直にお話していきます。その選手がディビジョン1レベルのプレーヤーか否かも正直にお伝えするつもりです。それによりわれわれの関係を前進させ、来年の留学生に繋げていくことが出来ます。
井上 これから奨学生を目指す日本の高校生のプレーヤーに向けてメッセージをいただけますか?
ジェファーソン はい。彼らに是非言っておきたいことは、「プレーに打ち込み、共にプレーする」ことです。できないプレーをしようとする若者が何と多くいることか。自分ができるプレーをし、いいところを前面に出していくこと。パスが得意であればパスを回す。ジャンプシュートが得意であれば、それをする。試合中出来ないことをしてはいけません。試合を駄目にするだけです。出来ないことがあれば、それを徹底的に練習すればいい。ただ、ここにはたくさんのチャンスがあり、多くのすばらしいプレーヤー、コーチがいます。 熱心に取り組み、学ぶことに意欲的な若者には常に何かしらのプログラムが用意されています。コートでもコート外でも、特に勉強ですが一生懸命努力することが大切です。これら全てが重要です。これからやって来る皆さんを楽しみにしています。いつでもコーチできる準備は出来ていますよ。