★あまりにもリアルすぎる感情描写!!
[何も知らないけど、キミが好き。]
きし晴護
アニメが好きな小田巻(おだまき)アイリ。彼女は『推し』にのめり込んでいる友人・翠を少し軽蔑しながらも、一緒に好きなアニメの舞台を観に行く。しかし、そこでアイリの運命を変える出会いが…!?
2.5次元の世界を演者、ファン双方の視点でうまくかき分けられている。各キャラクターの心情描写もうまく、画力もあるため、作品世界に入りやすい。ただ、3話でまだ肝になる事件が起きていないのが気になる。どんな漫画なのか早めに読者に提示するため、もう少し展開を早くし、読者の気持ちをがっちりと掴んで欲しい。
★読者を引き込ませる展開と構成力!!
[メニ・メニ・マネー・サプライズ]
高哉 佳依
自分の彼氏・尚のことを奴隷ATMと呼んでいる灘浜ハユ。そんなハユは大学の同じゼミの男・アンリに恋をする。アンリに振り向いてほしいハユは彼氏から貢がれたお金でアンリの気を引こうとするのだが…!?
冒頭の掛け合いで二人の感情の動きを丁寧に描いていて、すごく期待が持てた。しかし、後半でラストのどんでん返しに向けての感情の動きが希薄になってしまっているのがもったいない。ページ数も少なく収められているので、もう少しページを増やして、ラストに関係がひっくり返るまでに二人の心情変化をしっかりと表現してあげて欲しかった。
★奨励賞とW受賞!!
[スピン]
ハセガワ
他の社員よりも仕事ができるエリート社員の速水佑(はやみたすく)。彼には、誰にも言えない秘密(からくり)があった。しかし、ある時を境に、彼の身に思いがけないことが起こり…!?
時を止められるチートなアイテムを読後感良く描ききった展開は良かった。ただ、お仕事もの作品としての職業のリアリティの掘り下げが弱いために、主人公の苦労や試練への向き合い方にうまく入り込むことができなかったので、もう一歩、デザイン業界、ネタにする職業に踏み込んだ取材をして、描いてみて欲しい。
★見事な着眼点の企画!!
[0.003%のお仕事(CRA臨床開発モニター)]
山夏 でおん
憧れの治験業界の会社に入社した満月ぽん子。仕事がイマイチ上手くいかない彼女は、上司から、ポンコツぽん子と呼ばれてしまう。しかし、ある緊急会議の最中、彼女は意外な一面を見せる…!?
絵に個性があって非常にいい。主人公が今の世の中のシステムでは、うまく評価されていない隠れた天才という設定もよかった。ただ、主人公の変わっている要素ばかりが描かれてしまっていて、いまいち読者が応援したくなる要素に欠けるのがもったいない。読者に愛されるキャラクターをイメージして更なる進化に期待。
[PORTER’S HEART]
ハセガワ
自転車で配達員をしているユーリ・グッドマン。彼は、たまたま配達先で出会った女性に恋に落ちる。しかし、彼女には想い人がいた。彼女の想いを届けるために、彼はペダルに足をかける…。
非常に爽やかな恋愛漫画で好感度は高い。しかし、二人の関係にハードルがなく、読者が応援できる展開がない。偶然出会った二人が、困難や事件を乗り越えて結ばれていく展開がないと読者が二人の恋を心から応援し、共感していくことができない。二人の関係性を進める上でどんなハードルがあったら読者が応援したくなるかを意識してみて欲しい。
[殺し屋と漫才師]
ここなっつ
殺し屋・田中バザロヴァきららに与えられたミッションは、お笑い芸人になってターゲットに近づき、抹殺すること。そのために、お笑い学校に入学した彼女は、そこで相棒と思われる宇野ひかりと出会い…!?
殺し屋×○○は非常に面白い設定だった。アイデア次第ですごくいい作品になると思う。ただ、設定だけ投げて回収できていない部分が多く出てきてしまっているので、読切の中で回収できる範囲を意識して描いてほしい。また、映像化まで見据えると女性漫才師というのは非常にハードルが高いのでネタも含めてしっかりと作り込んで欲しい。
[とりあえず
筋トレしよう]RIMUI
日常に退屈を感じながら生きている佐藤健一郎。彼は今日も不運なツイていない一日を過ごしてた。しかし、ある時、隣の席の同僚・田中に筋トレに誘われてから、佐藤の生活は少しずつ変化していく…。
読者が感じている当たり前の日常への焦燥感がうまく描かれていた。ただ、物語という意味では、主人公が乗り越えるハードルが弱い。筋トレによって、主人公がただ自信を得るだけでなく、読者の欲望も満たす物にしてあげて欲しかった。
受賞者の皆様おめでとうございます。全作品に個性があり、甲乙付け難く、大変楽しく選考させて頂きました。中でも、めちゃコミックにハマる視点で、加点をしました。めちゃコミックは、続きが気になる展開は勿論、アンソロジー形式の作品も話単位で購入し、サクサク読める利点があり、『何も知らないけど、キミが好き。』はとてもめちゃコミック向きだと感じました。
MBSは2回目の参加で、前回に続き、たくさんの才能溢れる作品に出会いました。ドラマ化の決定には至らなかったものの、魅力的な設定や話の展開に惹き込まれるものも多く、映像化まであと1歩と思える作品もありました。読み切りで面白いものもたくさんありましたが、ドラマ化するにあたっては、その後の世界を覗きたくなり、そして、キャラクターたちが映像で動いている姿を見たくなる作品にも出会えればと思います。深夜ドラマらしい、さらにエッジの効いた設定などの意欲作もお待ちしております!
「新人賞」という見方、つまり「作家評価」という視点ではそれぞれとても面白い才能だと思いました。
「電子で売れTVドラマになる」という視点では、(僕はオジサンですのでそれが当たってるかわかりませんが)女性目線の、ちょっとエグイ心情を描けている『メニ・メニ・マネー・サプライズ』や『何も知らないけど、キミが好き。』に可能性を感じました。
たくさんのご応募ありがとうございました。これまでの青年誌の枠組みを超えた力作ぞろいだったと思います。
受賞にとどまらず、連載への道程を短くするためには是非、募集要項の「キーワード」を意識してみてください。自分が描きたいものを「どう切り取って」、「どう読者に提示するべきか」がわかりやすくなるはずです。ドラマンガ大賞ならではの、女性を意識した作品をこれからもお待ちしております。
ドラマンガ大賞の名にふさわしい最終候補作品となりましたが、読み切り作品=ショートドラマ、連載作品=連続ドラマと例えた時、起承転結がついていなかったり、途中でフェイドアウトするなど、実際に映像化したときの想像力が及んでいない作品が目につきました。そうした意味で、作品が内容の精査次第ですが、賞の性質に合致しそうなのは「0.003%のお仕事(CRA臨床開発モニター)」。群像劇で視点が定まっていないものの、視聴者の絞り込みと演出次第では「何も知らないけど、キミが好き。」が上位となります。