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 並里 選手に聞く─── ※このインタビューは07年11月28日に行われました。

並里 成選手とは

沖縄県出身。小学校からバスケットをはじめ、コザ中時代には全国中学校大会に出場。当時からそのボールコントロール力は並外れたものを持ち、福岡第一高ではいきなりスタメンを獲得。1年生の全国高校選抜ではみごと優勝し、ベスト5に選ばれた。2年時にはU-18日本代表としてアジア選手権を戦い、今年も司令塔として福岡第一高を高校総体ベスト4へ導いた。

――バスケットを始めたのは、いつ頃で、どういうきっかけで始めましたか?
 5歳の頃から始めました。きっかけとしては兄(祐・現中部学院大2年)がミニバスをしているのを見に行ったことです。そこで初めてボールを触りました。その当時、バスケットボール が楽しいというよりは、周りの人たちと遊べるというのがうれしくて、そこからのめりこんでいきました。
――好きなNBA選手や憧れの選手はいますか?
 アレン・アイバーソン(デンバー・ナゲッツ)です。NBAの選手は2mを超えている選手が普通にプレイしていますが、その中で実際は180cmないくらいのアイバーソンがトップで活躍しているのはすごいと思います。
――沖縄の高校に進学せず、福岡に進んだのは、なぜですか?
 留学生とバスケットボールがしたいという思いから福岡第一に進学しようと決めました。福岡第一には外国人の留学生がいて、将来自分がNBAに行くことを想像するなかで、外国人の選手と一緒にプレイして慣れていこうと思ったからです。
――「スラムダンク奨学金」に応募したきっかけは?
 『月刊バスケットボール』に募集の記事が載っていて、それを見たのがきっかけです。高校を卒業したらアメリカでプレイしたいという気持でしたが、 実際どうやったら行けるのかわからなかったんです。でも、この奨学金の話を聞いて「チャンスだ」と思いました。
――実際、渡米して派遣校を訪れ、プレイしてみてどうでしたか?
 アメリカの各地から集まった選手たち30人くらいとプレイしましたが、周りの身長が高いことに驚きました。初日は体が動かなかったけれど、2日目からは自然にガードとしてのプレイが出来だと思います。コミュニケーションはバスケットをしながら、なんとなく・・・(笑)
――現地でチリアスコーチから合格を告げられた時は、どんな気持でしたか?
 合格した時は、正直自分ではよくわかっていなかったんですが、周りから「おめでとう!」という言葉をかけてもらったりして、初めて気づいた感じでした(笑) でも、本当にうれしかったです。自分の思っていた将来の夢への道が、ひとつ広がったような気持ちになりました。
――コーチから練習メニューを指示されたそうですが、どんなメニューでしたか? さしつかえなければ教えてください。
 フロリダ大学が優勝した時の筋力トレーニングのメニューです。ベンチプレスやカールなどで筋力をアップさせて、アメリカでも通用できるような体を作るように、いつもやっている回数を減らして、その代わり重さを上げて体を大きくするように指示されました。

派遣校サウスケント校 チリアス前コーチより

1972年生まれ。サウスケント校前任コーチ。ビクトリア大学大学院でコーチング学を就学。ラファイエットカレッジでバスケットをし、イタリアとスペインのプロでプレイヤーとして6ヶ月を過ごした。サウスケントを率いて4年。2008年2月退任。

ナリ(並里選手)が、長旅のあとすぐに、われわれのチームのトップレベルの選手相手に十分にやりあったのは、うれしい驚きだった。ナリは並外れたクイックネスを持ち、素晴らしい視野を持ったパスの名手だ。彼が力強くなり、アメリカのプレイスタイルになじんでくれば、サウスケントスクールに貢献する選手となるだろう。スラムダンク奨学金プログラムは日本の選手にとって、有望な選択肢になるだろう。なぜなら、このプログラムは、日本の少年にトップクラスの教育を受けながら世界のバスケットボールでの夢を追うチャンスを与えるからだ。また、このプログラムはアメリカのバスケットボールファンに日本の選手と文化を伝えるいい機会を与えるだろう。

――第2回の奨学生の募集は、すでに始まっています。第1回生として思う所はありますか?
 まず、こういうチャンスを与えてくれた井上雄彦先生に感謝したいと思っています。今までこういう形でのアメリカへの道はなかったので、「アメリカでプレイしたい!」と強く思っている 人は、どんどん応募して、アピールしてほしいですね。
――奨学生として当面の目標は? 
 まずは、しっかり大学へ入学できるように勉強をしていきたいと思います。今現在も英語の勉強をしていますが、奨学生として合格を言われた時からさらに現実味を帯びて、さらに勉強しないという気持があります。そしてアメリカへ行ってからはバスケットのプレイとしてはチームの中でアピールをして、大学からのピックアップを受けられるように頑張りたいです。 そして将来の目標は、小さい頃からずっと思ってきたNBAでプレイすることです。その夢がかなうように頑張ります!

第1回奨学生の選考を終えて 井上雄彦

 並里君という高校バスケット界屈指のプレイヤーが、この奨学金のことを知り、応募してくれたことにまずは幸運を感じます。感謝したいです。

 今回現地の練習に参加してもらったわけですが、アメリカのバスケットと日本のバスケットの距離感について、新鮮な発見がありました。通用するものしないもの、それはひとりの日本人が彼らと同じチームに入ってプレイすることで初めて、「同じ単位で正しく測れる」ということ。特に日本人の優れている部分は、日本人自身がきちんと自己評価できていないといけないと感じました。並里君の持つ優れた部分は、アメリカでも相当目立つだろうと思います。マスコミや世間も含めて我々は、「バスケは日本人には無理だ」と決めつけてはいけません。

 並里君には自分の夢のために、やらねばならないことをしっかりとやってもらいたいと思います。それはきっと結果として、日本バスケの 天井を押し上げることになるだろうと信じています。