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グランドジャンプ連載陣

#3 違うメンタリティの同級生と暮らすこと

──アメリカに渡った日本人といえば、日本初のNBAプレイヤーとして話題になった田臥勇太がいますが?

物凄いことだと思いますよ。あの身長(173センチ)ですから。アメリカ人だったとしても、あの身長でNBAに入れるのは、本当に何年かに一人ですからね。

──ただ現在、田臥は下部リーグでプレイしながらNBAに再チャレンジ中。やはり現実は厳しいとも。

そうですね。年齢もだんだん上がっていくとハンデになってくるだろうし。実際には年齢は関係ないとしても、見る側が偏見を持つ可能性がありますよね。21~22歳までじゃなきゃ、とか。 だけど田臥選手は年々よくなってきているみたいなので頑張ってほしいですね、これからも。心から応援してます。

──先生は1年間ロサンゼルスで暮らされたわけですが、その時感じた日本とアメリカの違いというのは?

社会におけるスポーツのステータスの違いを感じましたね。アメリカでのバスケットは娯楽を超えた、生活になくてはならないもの。そしてそのトップに辿りついた選手は、それなりの社会に対する責任を持って行動し、同時に敬意も払われている。それに対して日本では、TVの視聴率の観点でしかスポーツを見られなくなっている。たとえば、まだゲーム中なのに画面の右上に「この後スーパーショット!」とか出てきたり。目の前で行われているゲームへの敬意が感じられない。

──スポーツ番組のバラエティ化は年々進んでますよね。

どんどん惨状が広がって(苦笑)。ひどいことになってきてますよね。ああいう姿勢をある大人が見せちゃうと、子供たちにスポーツのあるべき姿を伝えられなくなってしまう。たとえば、スポーツ中継でタレントが出てこなかったら「何で出ないの?」って不思議に思う子だって出てくるかもしれない。そうじゃなくて、やはり人間同士がやっている、スポーツそのものの価値を見せなければいけない…って、マスコミ批判になっちゃいましたね(笑)。

──話を戻して(笑)。ロスの公園にはやはりバスケのコートやリングが?

ありましたね。いたるところに。公園にもあるし、家にもあって誰かプレイしている。もちろん誰もやってない場所もありますけど、逆にそれだけ数が足りてるからだと。

──食べ物のボリュームって、やっぱり大きかったですか?

デカいです!最初はふざけてんのかって思いましたね(笑)。スターバックスひとつとっても違いますから。こっちのグランデが向こうのトールサイズ。食べ物の基本的な量が全然違って、最初面食らうんですけど、だんだん慣れていつの間にか普通に食べちゃう(笑)。

──育ち盛りの学生だったら、背も伸びるかも(笑)?

どうですかね。食べ物の量は、アレはどうかと思いますけど。

──日常生活のコミュニケーションで感じた違いはありますか?

近所のホームパーティ-に行っても、自分はこう思うとか、自分はこういう人間だと主張しないと、いないと同じ扱いをされます。だから奨学生の方も、バスケットそのものの質や練習方法の違いもあると思うけど、違うメンタリティを持った外国の同級生たちと一緒に暮らす…その事が糧になると思います。自分の要求は、一個ずつ主張していかないと生き残れないと思いますから。