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グランドジャンプ連載陣

#4 FIBA選手権で見た世界標準のバスケット

──自己主張。やはりスポーツ選手にはエゴが必要だと思われますか?

僕が思うのは…アメリカでもエゴは決していいものとは思われていないんですよね。コービー・ブライアントだって「彼はセルフィッシュだ」って代名詞のように批判されている。だけど「何がエゴか?」という定義が日本とアメリカでは大きく違うと思います。スポーツ選手として勝つために当然すべき自己主張、日本ではそれまでがエゴと言われてしまう気はしますね。

──具体的には?

この夏行われたバスケットの世界選手権で「あ、これこそがいいエゴだ!」と思ったプレイがあって。残り数秒で日本の桜井良太という選手が自軍のゴール下でボールを持った時、相手ゴールまでドリブルしていって、シュートを決めたんです。日本ではそういう場合、パスして攻めていくケースが多い気がするんですけど、彼は一人でコートの端まで走っていった。自信と攻め気がいい形で表れたプレイだと思いました。

──私も観ましたが、カッコよかったですね。

カッコよかったよね。あれがいいエゴ。結果としてチームの士気も高まるし、ゲームの流れも良い方向に変わる。

──ただバスケの世界選手権は、やはりサッカーのワールドカップと比べると世間の関心が低かったと思います。

バスケットファンとしては、開催国なのに勿体ないという思いで一杯ですよ。でも、今回1勝4敗という数字はともかく、日本代表はよく頑張ったと思う。

──日本代表の世界でのポジションという意味では、バスケとサッカーは、さほど変わらないのでは?

知名度で損をしているだけで、レベル的には変わらないと思いますよ。まあ一つニュージーランド戦という、すごく手痛い負けがありましたが。それでも今回のバスケットの日本代表は頑張ったと思います。

──世界選手権で印象に残ったチームや選手は?

僕が見た試合は限られているので、全体の事は言えないですが、ギリシャの4番、パパルーカスという選手。チームとしても準優勝のギリシャと優勝国のスペインが印象に残りました。パスを有効に使って、アウトサイドから3ポイントをバシバシ決めて。世間では、バスケットと言えばアメリカのひとり勝ちと思われているけど、今回の世界選手権ではヨーロッパのバスケットボールがアメリカに勝ったわけです。ヨーロッパのバスケット、もっと観なきゃなって思いましたね。

──NBAだけが世界ではないと?

そうですね。世界選手権で良かった事はヨーロッパ勢の活躍で、アメリカのNBAのあのスタイルが最高峰という認識を覆した。NBAとは別のヨーロッパのバスケット、FIBAという世界標準のバスケットがあるという事を僕たちに教えてくれましたよね。

──身体能力、個人プレイ重視のNBAと比べて、ヨーロッパ、FIBAのバスケはチームプレイ重視というか。

やはりNBAのバスケットは圧倒的に個人プレイの比重が大きくて、体格的にも身体能力でも日本人が近づくには大きな差があると思う。でも、そのアメリカが世界選手権では苦戦した。だから今回の奨学金でも、まずはNCAA1部リーグの大学に行く事が目標ですが、その次はNBAだけかと言えば、そんな事はない。ヨーロッパのリーグという選択肢もあるし、これから日本が目指していくのもNBAよりFIBAのバスケットかもしれません。