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勉強もバスケも、みんなから応援されてます───

※このインタビューは08年12月に行われました。

「ナリ!ナリ!ナリ!」

 体育館のスタンドから、賑やかな声援が聞こえてきた。11月半ば、スラムダンク奨学生1期生の並里成が、留学先のサウスケント校(米国・コネチカット州)のユニフォームを着て、初めてホームコートに立ったときのことだ。

 熱狂的な声援を送っていたのは、サウスケントでの並里の友人たちだ。どうやら、いつの間にか私設応援団が作られていたようだ。

「ナリ(並里)のプレーは見ていて本当に楽しいから、ああやって熱狂的に応援したくなるんだろうね」と一人の先生が言う。この先生も並里のプレーに魅了されたらしい。

 スピーディーなプレー。巧みなボールハンドリング。広い視野を生かし、左右どちらからでも出すことができるパス。相手のディフェンスがぴったりとマークしてきたら、本領発揮とばかりにディフェンスを翻弄し、かわして攻める。ディフェンスではスティールから攻めに転じる。時々飛び出すトリッキーで派手なプレーに、体育館全体からどよめきが広がった。

 並里は「自分的には普通のプレーをしただけなんですけれどね」と言いながらも、仲間からの喝采が嬉しそうだ。

「自分が出てきたら、みんな、会場が沸いて。自分でも何でかよくわからないですけれど。みんなから応援されてます」

 仲間から応援されているのは、試合のときだけではない。たとえばこんなこともあった。

 サウスケントでは、生徒全員が卒業するまでに必ず暗唱しなくてはいけない古典の詩がある。しかも、バスケットボール部の選手たちは、それを10月のシーズン開始前に暗唱するようにと言われていた。現代の英語でのコミュニケーションすら苦労している並里も例外ではない。

「15行か20行ぐらいあって、昔の英語なので意味も理解できないくらい難しくて。自分、絶対にできないと思ったんですよ。あのときが一番きつかった」と並里は振り返る。

 暗唱ができないとバスケットボールもさせてもらえないと言われ、自称「追い込まれたらやるタイプ」の並里は必死になって覚え、なんとかみんなの前で暗唱するまでにこぎつけた。

「そしたら、みんなが拍手で迎えてくれて。(暗唱が)終わったときも、本当にみんな盛り上がってました」と笑顔を見せた。

 母国を離れ、慣れない英語を使って生活する並里にとって、まわりの友達からの応援は毎日の支えになっているに違いない。そう言うと、「そうですね。みんなから応援されてます」と、さっきと同じセリフを繰り返した。そして、こうも言い足した。

「別に、たいしたことはしていないんですけれど」

 実際のところ、バスケットボールでも勉強でも、まだ満足できるような状態ではないことは確かだ。むしろ、壁にぶつかっていることを感じることのほうが多い。