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グランドジャンプ連載陣

自分の夢は日本に残ることじゃないので、こっちで経験できることが大きい───

 ※このインタビューは09年12月に行われました。

谷口大智

身長/199cm
ポジション/PF
年齢/19歳

SD奨学金2期生。奈良県出身。小6年の時にすでに191cmの長身で全国から注目を集めた。名門洛南高校に進学。1年の時からスターターとして活躍し、ウィンターカップ三連覇を成し遂げた。U15、U18日本代表。インサイドに加え外のシュートも決められる選手として期待される。

 米コネチカット州にあるサウスケント校のキャンパスは、前日に降った雪が芝生を埋め、一面銀世界だった。4月からこの地に留学してきたスラムダンク奨学金2期生の早川ジミーと谷口大智は、凍るような北風に「今までで一番寒い。」と震えていた。とはいえ、厚いコートに雪道用のブーツと、さすがにこの地の冬に向けての防寒対策は万全だ。ブーツは日常品を買い出しに行くウォルマートで買ったのだという。

「足下は写真には写さないでくださいよ。」とリクエストが入る。人の目も気になる19歳である。

 関西出身の谷口と、横浜出身で福岡の高校に行った早川。二人とも、さすがにこれだけの雪や寒さは日本では経験したことがないと言う。

 日本で経験したことがないのは、寒さや雪だけではなかった。

少しずつコーチの信頼を勝ち取り、レギュラー入りした谷口。すでに大学9校から勧誘の手紙が届いている。

 留学してから早くも半年が過ぎ、9月からは、待ちに待ったチーム練習が始まった。今シーズンのチームは早川と谷口の2人を入れて12人。日本では常にチームで一番長身だった谷口(199cm)でも、このチームでは彼より背が高い選手が2人いる。早川(189cm)にいたっては、小さいほうから数えて4番目だ。

「日本でセンター的なポジションをやっていて、ガードはやったこともなかった。」と早川。それでも、アメリカでバスケットボールをやるためには、日本で慣れたインサイドではなく、ガード、あるいはスモールフォワードとして外まわりのプレーをする必要がある。

「自分的には違和感はないんですけれど、かといって、みんなのように余裕をもってできているわけでもない。ましてこっちはレベルもスキルも高いから、その中に入っていくのは難しいです。」と、悩みを告白した。  11月14日のシーズン緒戦、チームは93対79で勝利をあげたが、谷口も早川も、ベンチに座ったままで最後まで出番がなかった。

「試合にまったく出なかったのは初めてですね。かなりへこみました。」と谷口は言う。チームで谷口と同じパワーフォワードのポジションの選手はほかに2人。その2人を超えないことには出番はない。

ジェファーソン・コーチからリバウンド力のさらなる強化を求められている谷口。ジャンプ力ではマッチアップするアメリカ人選手に負ける分、下半身を強化し、スクリーンアウトの徹底を心がけているという。

 それでも、運のいいことに谷口には間もなくチャンスが回ってきた。2試合目、ほんの数分間の出場時間だったが、その間にノーマークのシュートを決めることができた。長身の割に外からのシュートも決められるというプレーの幅の広さが コーチにも認められ、3試合目、4試合目と少しずつプレータイムが増えた。そして5試合目以降は出場停止や怪我の選手のかわりにスターターで出場する機会が巡ってきた。

「怪我したやつには悪いですけれど、自分はそのチャンスを生かそうっていう感じです。」と谷口は言う。

 ジェファーソン・ヘッドコーチからは、よく「プレーがソフトだ。」と指摘されるのだという。

「リバウンドや当たり合いに関してはまだついていけないところがある。それでも、最初に来たときからしたら気持ちも変わったし、やってやるぞっていう感じにはなるんですけれど、こっちの人たちからしたらまだソフトなのかもしれない。」と谷口。

 しかし“ソフト”の評価を覆すべく激しく当たっていくと、今度はファウルを取られてしまう。まだその境目がつかめずにいた。