奨学生目指す君へ!! 井上雄彦
この奨学金を設立したのは、やはり感謝の気持ちからというのが大きい。バスケに出会ったからこそ描く題材を得られたわけだし、その時期に身に付いたことが漫画を描く上でどれだけ生かされているか計り知れないからです。
そして付け加えるなら、やはり日本バスケが強くなってくれたら嬉しい。そのためにほんのわずかでも自分に出来ることがあれば幸いです。勿論選手の人生を左右することになるのは分かっている。半端なことはしないつもりでいます。
日米のバスケの違いは、最終的には「個」の強さの違いに集約的に現れている。まず個人の闘いありきなのがアメリカ。日本人が米に行って最初に対応を迫られるのは、肉体的にも精神的にも、彼らの「個」の強さ(我の強さも)に対してだろう。力が支配するという考えがいいか悪いかはともかく、少なくとも勝ち負けのある闘いにおいては強い者が正しい。逆にだからこそいい「チーム」は彼の地でも愛される。規律や自己犠牲の尊さが讃えられ、それを実現させられるコーチは尊敬される。順番は、まず鍛えられた「個」ありき、次にそれを束ねて「チーム」となるわけです。
日本人には日本人の良さが必ずある。それは特に「チーム」の部分において生かされる部分かも知れない。それを証明するためにも、世界基準で闘うための前提となる個々の強さ、強き者の中で闘う賢さを身につけてきてほしい。奨学金第1期生となるのは勇気のいること。ただ、何であれ成し遂げた人は、まず挑戦した人たちです。勇気ある挑戦者たちを歓迎します。